The Valley of the Wind

2006年の民主化デモ、暴動、首都焼失から4年。その後国王は自らが手にしてきた権益の多くを政府に譲渡することを宣言した。
昨年11月の選挙は歴史上の転換点となり、王国史上初めて人民代表議員から17名が選出された(他に貴族代表議員9名が選出されている)。そのなかでも民主化推進派が多数を占め、民主化への一途をたどるのか、と注目されたのもつかの間、その約1ヶ月後に行われた選挙で首相に選出されたのは、民主化推進派リーダーではなく、貴族議員であった。果たしてこの国の政治はどこへ向かっていくのだろうか。


現在執筆中のなかの一本はこのトピックなのだが、これだけ読んでどこの国の話かわかる人は非常に少ないとおもう。南太平洋唯一の王国、トンガの政治状況だ。


もちろん私だって自分が研究者でなければこんなニュースに無関心だっただろう。南太平洋の島々全般について、日本語での報道はほぼ皆無だし、英語のニュース、といっても発信源はアメリカやイギリスではなくオーストラリアやニュージーランド


私たちは自分に関係する事柄を「ニュース」として日々受けとめ、基本的にその関心は、自らを中心に放射状に薄まっていく。あるいはメディアの操作によって私たちのメンタル世界地図はつくられ、その濃淡=関心の程度が認識を形成する。


政治や経済の文脈における「大国」が世界を動かすのは当然の理なのだが、また人びとの関心も論点もそこに集中するのは不可避なのだが、「その他の国々」に住む大多数について、私たちはあまりにも知らなすぎる。


だから「南の島」はいつだって夢と欲望の目的地で、そこに暮らす人びとの生を取り巻くリアリティーを知ることなんてほとんどない。いや、夢を見つづけたいから、私たちは知ることを無意識的に遮断しているのかもしれない。



そうやって自分に言い聞かせる私であっても、行ったことのない場所についてはついエキセントリックなまなざしと共に妄想を繰りひろげてしまう。これは土曜の研究会でN先生が見せてくださったパプアニューギニア高地の地図。土地の人びとは「雨の谷」「熱い谷」「風の谷」と名付けているんだって。うわあ。情緒的でうっとりする。


タイトルからナウシカの話題を期待した方は残念でした。
(ちなみに原作の漫画を読んでいない人は今すぐ書店に走るように!)